昨日、彼を振りました。
でも、視線を逸らしたくても、まっすぐに見つめるその瞳から逸らせなかった。

「なあ、三峰。
俺はおまえのことが――」

……やだ、聞きたくない。

耳を塞ぎたいのに、身体はメドゥーサに睨まれて石になってしまったみたいに動かない。

――好き、だ。

落ち葉の舞うかさかさという音とともに、耳に届いた言葉。
とたんに涙がぽろぽろこぼれ落ちる。

「……やだ」

「三峰?」

「やだ。
こんなの、やだ……」

あたまを振って私が泣き続け、荒木さんは途方に暮れていた。

困らせたくない。
でも。

「ちょっと落ち着け。な」
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