バンパイア・ トラブル


礼子は身動きできないおれを抱き締める。



「わたしの初恋でした。笠原さん」



礼子が云った。



「あの時から、ずっと好きでした。きらびやかな綺麗な女性がお好きなんだと思い、わたしなりに努力しました」



きらびやかって………



目を閉じたおれの顔が笑う。


礼子らしい表現だな。


確かに見た目が派手な女の子が多かったが、向こうが勝手に近づいて来ただけだ。

それに礼子だって美人だ。




「わたしは吸血鬼の末裔です。皆が心配して、あまり外へ出してもらえませんでした。あの頃は何もかも嫌で。冒険のつもりで外に出て。笠原さんは本や映画のヒーローみたいでした。本当にこんなことがあるんだって感動しました」




礼子は大切な思い出を懐かしみ、噛み締める。




「でもわたしは珍種のバンパイア。相思相愛でなければ結ばれることはできません。あなたを苦しませてしまうのは、わたしを女性としてみていないからですよね?」





礼子は悲しげに呟き、おれを抱き締める手をゆっくりと放す。




「本当はわたしがあなたを奪いたかったのです。でももう諦めます。ごめんなさい笠原さん。また、お会いできて嬉しかったです」




礼子がおれから離れようとしている。


おれはバカだ。


礼子の気持ちを全く考えていなかった。

おれは被さったまま何とか身体を動かし礼子を抱き締めた。

夢じゃない。



「………礼子………」



被さった身体を起こし礼子の顔を上からのぞき込む。

礼子は泣いていた。



「キレイになったな。あの時の女の子か」



おれは腕を動かし礼子の顔を撫でる。



「笠原さん、覚えて……?いえ、もう無理なさらないで」
「無理なんかしてない」



おれの胸が鳴る。
こんなに一途におれを想ってくれる女が今まで、いたか?



「すげぇかわいい。礼子」



おれは礼子の魅力的な紅い唇に指で触れる。

おそらくおれは、礼子を好きだと信じてる自分が好きだったんだ。

今までは。


やっと気がついた。


多人数にモテるより、たった一人の好きな人間に想ってもらえることの方が遥かに難しい。


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