バンパイア・ トラブル

次の日。

おれの左頬は紫色になっており、仕方なくマスクをつけて出社した。
口を動かすのも痛みが走る。


思いっきり、ぶっ叩かれたからな。


会社の事務所に顔を出すと事務の女の子が近づいて来た。
スーツ姿のおれを見上げ挨拶する。



「おはようございます、笠原(かさはら)さん。風邪ですか?」
「うん、ちょっとね」



この子は今年入社したばかりの高卒の女の子で、吉沢ひかる(よしざわ ひかる)という。

身長は低い方かな。

おそらく一五0センチあるかないかくらい。
背中くらいの黒髪を耳の下で左右に結んである。
丸い瞳、かわいらしい目鼻立ちの女の子だ。

年齢は一八歳。

今は四月だから本当に卒業したばかりだな。


本人の希望と会社の忙しい時期とが重なり、早めの仕事初めとなっていた。

事務服姿が初々しくてまぶしい。

おれのマスク顔をじっと見つめている。



「お大事にして下さい。あ、小吹(こぶき)さんは販売場所が少し遠いので、直行直帰するそうです。………笠原さん、遊んでばかりはダメですよ?」

「わかった。ありがとう」



おれの左頬。
何となく気づいているみたいだな。

おれがマスク越しに笑顔を見せると吉沢ひかるは笑顔を返し去っていった。


かわいい。
癒されるなあ。


本当にかわいいが、おれは二十歳未満は女としては見られないんだよな。

もっと年食ったら対象年齢はさらに年齢が上がる気がする。



ああ遅くなったが、おれの名前は笠原祐輔(かさはら ゆうすけ)という。



自慢じゃないが、おれは女にモテる方だ。
いやそんな甘いものではなくモテモテだ。



よく綺麗な顔立ちだと云われる。

肌や髪の色素が元々薄くて肌は白い方、髪も茶色に近い。


身長は一八三センチ。
体型は若干、細身だ。
だが学生時代は水泳をしていたせいか肩幅が広い。


歳は二十七歳。


三年前に転職し今の仕事についていて一応、部署の責任者をしている。

おれは自分のデスクにつくと今日の予定を確認する。

先ほど吉沢ひかるが云っていた小吹は、おれの同僚だ。
おれの補佐として動いている。


見た目はおれとは系統が違う、黒髪でがっちり系の男らしいイケメンだ。

おれとよくセットで女の子に噂される。
年齢はおれと同じ二十七歳。
身長はおれより高い一八五センチだ。


最近は吉沢ひかると共に、おれの女関係について説教することが多い。
まったく余計なお世話だ。


まあそれはさておき、場所が田舎なので早めに出勤して行ったようだ。

もうひとりも手伝いで行っているので、ギリギリの人数で仕事している。


そんな中で今日は途中入社の女性が配属される予定だ。

ちなみに仕事だが、本の外商をしている。

主に学校に赴き教科書を販売したりする仕事だ。



「三月、四月は人手が足りないからな。ひとりでも多い方がいい」


おれはそのまま外注の確認作業を始めた。

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