夢物語
 「そ、そうなの」


 本当はもう知っているのだけど、知らないふりをしなければならないような気がして、不自然な笑みを浮かべながら答えていた。


 「高橋さん、もう知ってるんですよね? さっきの話題からしても……」


 「あ」


 そういえば、西本くんが美人女優の山口のぞみのファンである話題から派生して。


 私が山口のぞみに似ているだとか、その流れで付き合っちゃえば~? って冷やかされたのだった。


 「僕が独身なことをもし知らないのなら、サークル全体で不倫を推奨していることになりますよね」


 かつて不倫騒動が原因で、空中分解しかけたこのサークル。


 先日の集まりでも升田夫妻は繰り返し「二度とあんな騒動はごめんだ」と語っていた。


 当たり前だけど不倫は絶対禁止の環境。


 そんな中、私と西本くんを冷やかすような発言が連発するということは、すでにみんな西本くんが離婚したという事実を認識していることの証。


 「……何となく、そんな噂は耳にしていたけど。あくまでも噂で」


 こちらがお金をテーブルの上に置きながらあれこれ話をしている様子に勘付いた賢人が、会計タイムだと判断しお金を手にこちらに寄ってきたため、慌てて会話を終わらせた。
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