夢物語
 「今日はうちの旦那いないから、ゆっくりしていって~」


 自宅を提供してくれた松元さんの厚意で、夕方を迎え焼肉台を片づけた後、家の中に入って二次会のようなものを続行することとなった。


 食べ物も飲み物も、まだ豊富に残っている。


 「……でももう、彼女いるんでしょ?」


 背を向けて松元さんのキッチンでカマンベールチーズをカットしていたところ、西本くんに対する塩田さんのそんな質問が聞こえてきた。


 この場で初めて、西本くんの離婚の話を耳にした参加者もいたらしく、その話題となっていたようだ。


 「一応……」


 西本くんのその答えに、後ろからいきなり頭にボールをぶつけられたような気持になる。


 これまで散々周りに冷やかされ、その都度笑顔で「大人の対応」を繰り返し、まんざらじゃないような態度で接してきていたのに……。


 本気にしていたわけではないものの、現実を突きつけられると衝撃なのは事実。


 こんな動揺を周囲には知られたくなくて、何も聞こえていない、聞いていないふりをして、カマンベールチーズをカットし続ける。
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