夢物語
 確かにそれはあり得る。


 あの日西本さんが私に気持ちを打ち明けて、強引に体を奪っていなければ……、私は別の運命を歩んでいたかもしれない。


 もしかしたら優くんと?


 それだけはあり得なかったとは、今となっては信じたいところだけど……。


 「いえ……。もしあの時こうなっていなくても、いずれ同じ道を歩んでいたはずです」


 そう信じないと私も優くんも救われないし、西本さんを幸せにしてあげられないと思った。


 「きっと私たちは、こうなる運命だったんです」


 「真由、ありがとう。でも……」


 急に真面目な表情で私を見つめた。


 「前からお願いしているけど、そろそろ敬語で話すのをやめてくれないかな。敬語のままだと、先輩の娘に手を出した罪悪感から逃れられないんだ」


 急に話題が転換。


 「ごめんなさい、今までの習慣で……。でもそれは事実だから、仕方ないでしょう?」


 いたずらっぽく微笑んでしまった。


 「真由があまりに可愛いから悪いんだよ」


 西本さんは微笑む私の唇を塞ぎ、もう一度強く抱きしめた。
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