鬼畜な兄と従順な妹
 父の家に着いたのだけど、あまりな事に私は絶句してしまった。だって、想像したよりももっと大きくて、まるで洋館みたいだから。実際に洋館なのかもしれないけど。

 荷物はやっぱり運転手さん達が持ってくれて、母と私は手ぶらでそのお屋敷へ入って行った。真っ先に私達を迎えてくれたのは、黒い燕尾服を着た白髪のおじさまだった。たぶん、執事さんだと思う。本物を見るのは初めてだけど。

「ようこそ、いらっしゃいました」

 執事さんにうやうやしくお辞儀をされ、私は、

「おじゃまします」

 と言ってペコンとお辞儀をしたのだけど、執事さんにニヤッとされてしまった。”おじゃまします”は、変だったのかな。

 更には、たぶん家政婦さんと思われる中年の女性や、なんと、黒のメイド服を着た女性なんかも、並んで私達を迎えてくれた。

 コスプレじゃない、本物のメイドさんを見るのは初めてで、私はちょっと、感動してしまった。

 そして気が付けば、長く曲がった階段、たぶん螺旋階段だと思うけどを、ゆっくりとした動作で降りて来る、若い男性がいた。栗色の髪が輝いて見え、顔は遠目でもわかるほど凛々しくて、スマートで、私はまるで、お城の王子様かと思った。
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