鬼畜な兄と従順な妹
「幸子をよろしくお願いします。大人しい子なので……」

 母が真一兄さんにそう言ってくれたのだけど、そんなはっきりと”大人しい子”なんて言ってほしくなかったな。大人しいか大人しくないかと聞かれれば、それはやっぱり大人しい部類かなとは思うけど、子ども扱いされたようで、ちょっと恥ずかしかった。でも、

「はい、任せてください。学校もすぐ慣れるように、僕が色々教えてあげますから」

 と真一兄さんは言ってくれたので、私は心の中で母に感謝した。だって、明日から通う新しい学校については、私にとって大きな大きな不安だったけど、優しい真一兄さんが色々教えてくれるなら、もう心配はいらないと思うから。

「幸子さんって、何月生まれなんですか?」

 真一兄さんが唐突に聞き、

「8月です。真一さんの妹になります」

 と、私よりも早く母が答えた。真一兄さんって、父から私の事は全く聞いていないらしい。私も真一兄さんの事はあまり聞いてなかったけど、私の兄にあたる事ぐらいは聞いていたのに。
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