鬼畜な兄と従順な妹
二人で地獄へ 〜真一Side〜
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 俺は風呂に入り、さっさと自室に閉じこもった。幸子と顔を合わせたくないからだ。

 あれから、あの光景が目に焼き付き、その処理に俺は困り果てている。スマホでゲームをしていても、あの光景、つまり神徳と幸子が抱き合い、キスする姿を思い浮かべ、ちっともゲームに集中出来ない。

 俺は何かで気を紛らわす事を諦め、寝る事にした。まだ、そんな時刻ではなかったが。

 ベッドに仰向けで寝転び、目を閉じるのだが、その途端にまたあの光景がよみがえる。

 ああ、くそっ。こんな時、もし俺が大人だったら酒を飲むんだろうな。いっそ、おやじさんのウイスキーを飲んでみるかな、なんて。

 それでも、しばらくすると漸くうとうとして、眠れそうになった時、部屋をノックする音がした。

 ちぇっ。せっかく眠れそうだったのに、誰だよ……

 と思いながら俺は体を起こし、ドアへ向かったのだが、考えてみたら、こんな夜遅くに俺の所へ来る人はいないはずだ。あいつを除けば。

 俺はドアを開けず、代わりにドアへ向かって言った。「誰?」と。

「幸子です」

 やっぱり幸子だった。幸子の声を聞いただけで、胸が熱くなる俺って、相当重症だと思う。

 俺はドアを開けるべきか否か、迷った。正直なところ、俺は幸子を見たい。いや、神徳とキスした幸子なんか、見たくない。

 迷った挙句、ドアは開けない事にした。

「何の用?」

「話したい事があるから、入れてほしいの」

「もう遅いから、明日にしてくれよ」

 俺はそう言い、ドアから戻りかけたのだが……

「私、裸なの。恥ずかしいから、早く開けてくれない?」
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