BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

いい加減、公園を出ようと足を進めたとき、入り口付近で知らない人とすれ違った。


公園に遊びに来たらしい、ツインテールの髪型が似合う小さな女の子。

3歳くらいだろうか。兄と思われる人と手を繋いでいる。


「コンニチワ」

舌足らずな片言でペコッと頭を下げるので、思わず笑みがこぼれた。


「こんにちは」

私も頭を下げると、女の子は恥ずかしそうに笑って滑り台の方へ向かう。


ハニーブラウンに染まった髪をなびかせる男の子は、よく見ると桜花高校の制服を着ていた。

濃紺のブレザーと青いラインの入ったチェックのパンツ。

佐々木海里は藤色のネクタイを締めていたけど、この人はエンジ色のタイだった。きっと学年が違うのだろう。


私と目が合うと、ニコッと可愛らしく微笑みかけてきたので、悪い気はしない。


「あー…………次はあの子にしようかな」


目が大きくて顔が整っているし、推しにするには申し分なかった。


「お前なー、ちょっと顔がよければ誰でもいいのかよ」


呆れた表情で藤川が立ち止まる。
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