クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!


改めて覚悟を決めなければならない。


大丈夫よ、香乃。


これは一夜限りのこと。

一夜限りわたしも大胆になるのよ、香乃。


自慢じゃないけど胸は大きいほうだと思うしお腹も出ていないから醜くはないと思う。

わたしなんかよりナイスボディーなお姉さん方の身体を彼はたくさん見てきているかもしれないけど……。


ずっと心臓はドキドキと音を立てていたが、彼の射るような視線にドキンドキンと外に漏れてしまっているんじゃないかと心配になるほど強く鼓動が打ち付け始めた。


今、顔や体が熱いのは恥ずかしさからなのか、湯上りだからなのか……。


しまいには指先まで震えてきて、タオルをうまくつかめなかった。


なんせわたしは処女である以前に男の人の前で裸になったことがないのだ。


衛生士学校のとき付き合っていた彼にだって、キスと、軽くブラジャーの上から触られたことがあるだけ。


自ら裸体をさらすというハードルの高さに今すぐ逃げ出したい気持ちにもなったが、もう引き返すわけにはいかない。


小さく深呼吸をしてから、小刻みに震える指で今わたしをまとっているものをはらりとはがした──。


──と、同時に目の前が真っ暗になった。


視界にはなにも映らない。

彼の綺麗な顔も。


「冗談だ。俺はお前になにもしない」


暗闇のなか、すぐ隣で落ち着いた声が響いた。

< 16 / 43 >

この作品をシェア

pagetop