クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「え……」
「湯冷めする。なんのために風呂に入ったんだ」
少しだけしかるような口調の彼。
真っ先にお風呂を進めてきたのは、ただの善意……?
「風呂を出たところの棚にコンビニで買った下着と、俺の服だが着替えを置いておいただろう。さっさとそれを着て髪を乾かせ」
たしかにコンビニの袋はあったと思うけれど、勝手に中身を見てはいけないと思い対して気には留めず確認することはなかった。
それに、あの服もただそこに置いてるだけかと……。
「わるいが俺はもう寝る」
とても疲れて眠たそうにつぶやいた。
時計は確認できないが、時刻は一時半頃であろう。
「この寝室の隣がゲストルームだ。ベッドに布団を敷いておいたからそこで寝るといい」
はがしたタオルを抱き締めるようにして肌にまといながら、信じられない気持ちでいっぱいになった。
感謝の気持ちと、申し訳なさと。
わたし一人勘違いして、今すぐ消えてしまいたいほど、とんでもなく恥ずかしい……。
「迷惑かけてすみません……」
「……話は明日聞く」
“逃がさない”
そう言われているようで胸がドキッと跳び跳ねた。
「それじゃあ、おやすみ」
わたしは暗闇のなか手探りで扉へと向かう。
「あ、の……」
寝室を出る前に、遠慮がちに口を開いた。
「わ、わたしは……成田香乃と申します……。
寝る前に……あなたのお名前を知りたいです……」
世の中にこんな親切な人がいるなんて。
どうしても今名前だけでも、知りたかった。
顔は見えないけれど……彼が小さく、笑った気がした。
「栂野直生だ」
なにも嫌がらずすぐに告げてくれ、聞いてみてよかったと胸が和らいだ。
とがの……なお……さん。
「栂野さん、ほんとうにありがとうございます……!おやすみなさい……」
少し遠慮がちに寝る前のあいさつを添えて、そっと寝室を後にした……。