クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「昨夜は迷惑かけた上に、こんな時間まで寝てしまいすみません……!!六時にアラームをセットしたはずが、起きられなくて……」
「俺はそのアラームで目が覚めたよ」
「!?な、なんとお詫びしたらいいか……。本当にすみません……」
「そう何度も謝るな。気持ちはわかったから。とりあえず着替えてきたらどうだ」
「は、はい、そうさせて頂きます……洗面台お借りします」
そういえば顔も洗っていないことに気がつき、寝起きの顔を見られて急に恥ずかしくなった。
ゲストルームから、自分の服とグレーの鞄をかかえてうつむいたまま洗面台へと向かった。
鏡にうつる自分の顔は、ぐっすり眠ったおかげかわりといい顔色をしていた。だが、寝起きということで頬がむくんでいて不細工だ。
タオルをお借りして顔を洗い、いつも携帯している歯磨きセットで歯を磨き、時間がかからないように最低限だけどいつもより丁寧に化粧を施した。
よ、よし。いちおうこれで大丈夫だろう。
あとは栂野さんにお礼のあいさつをするだけ……。
わたしは今からこの家を出てしなければならないことがあるのだ。
鞄を両手に持ったまま、コーヒーを飲み終えた様子の彼の前にもう一度やってきた。
そして、いったい何度目かの頭を下げる。