👑Emperor bride
 そしてそれは本当に夢だったのか、
とも思う。
 しかし今も御守りのように
チヤンクのくれた、ネックレスは琴乃の首当たりを輝かせている。



 あれから10年、琴乃は22歳に
なってい た。
 チャンク、は27歳になってる
はずだ。


 凄く格好良かったからモテモテのはずだ、あの頃は子供だったし
 彼が皇帝なら足元にも近寄れない。

 でもせっかくこの国に来れたの
だからチャンクがどうなって
しまったのかを
 確かめたい。


 生きてるのかさえ知らない。
 ずっと、ずっと待っていた。
 彼がいっものように、長い三つ
編みを流してやってくるのを。



 鏡を割った事を毎日後悔した。
 大好きな彼を救えたのは自分
じやなかったのか?・・・とか。




 諦めていた会いたいの気持ちが
甘い思い出となり吹き出して来た。もう、押さえきれ無くなってしまった。

 しかし此処がマノリラ国なのか?

 確かめたい。琴乃は見覚えのあるモノが無いか昔の記憶を辿って
みる。

 しかし、チャンクの部屋に
行っただけだし、外に出る時は馬だったし何より10年も前だ
朧気にしか浮かばない。


マノリラ国のようでもあり、
違う様にも思える。

じっくり風景を眺めた事は無い。
あれから時間も経ち
色々と変わってるはずだ。

 此処はマノリラ国かどうか確め
たい。
 誰か居ないのかな?

周りをキョロキョロとみて見るが
誰も居ない。

そうだ、マノリラ国は確か、
おやつの時間があった。

必ず一杯のお茶と焼き菓子を食べる風習がある。

国人の健康の為それは必ず
やらなければいけない。

いつか毒入りのクッキーを食べた時チャンクが教えてくれた。

あの頃、チヤンクは既に命を狙われていたんだ。今更ながら恐ろ
しくなる。


ずっとチヤンクは生きているのか?もう、死んでいるのか?

自分の中でも一番知りたかった。

しばらく農道をトボトボと歩いて
いると一台の馬車が走って来た。

「オ~オっと‥。アブネ」

琴乃は、馬車を避けたが、
弾みで土手の坂道を転げ落ち
てしまった。

痛~い。

ヒヒ~ンブヒーヒン!
どう、 どう どう!!

馬車が止まるとプックラ丸い
体型(推定68歳)のおじさんと、

痩せてはいるが健康そうな
(推定65歳)の女の人が馬車から慌てて降りてきた。


「あ~怪我ない?ごめんなさいね。」

  「私は大丈夫です。
   少し擦りむいたけど
唾つけとけば
   大丈夫ですよ。」

「いやぁすまないね。」
帽子を取って謝ってくる。
「本当に怪我無いかい?」

     「ウフフはい…
   ブフフすみません。」

「ほら、帽子かぶりなよ。
  あんたも、毛が無いからね。

怪我と毛が無い同士
良かった!良かったよ。

この人昔はフッサフサだった
のよー
何時からか淋しくなっちゃつててね
気がついた頃は、これなの!」
ツルツル
ナデナデ
「俺に惚れるなよ〜」
と円盤型の髪を撫でた。


ハアッハッハッハッハ
アーッハッハッハ
キヤハハハハ

元気のいい、おばさんはフランス
人形の着るような、でも地味な
色合いのくるぶしまでのスカート
を履いて首には赤い派手な
スカーフを巻いていた。


おじさんは普通のパッパツな
スーツを着て安心したように、
笑顔を見せていた。

顔的にはピエロみたいな感じで、
でもとても優しそうだった。


おばさんは良く喋り良く笑う
元気いっぱいの女性だった。


「あんたは、お茶は済んだのかい?」

 「え、お、お茶?
いえ、まだです。」

「ちょっとヨンスン、此処でお
茶しょう。
家までまだまだ三キロあるし。」

「そうだなカワン、。お茶にしょう。」

「一緒にどう?、
今日は親戚のパーティーがあってね
私達はお菓子職人だからずっと
厨房に居たのよ!」

「さあ、どうぞ、ピーチテイでいいかい?
焼き菓子も旦那が焼いたんだよ。
さあさあ。」


進められるままに、受け取った飲み物は、少しほんのり桃の香り
が鼻をぬけて、炭酸が入ってて、
乾いた喉を、ジュワジュワシュー
と潤してくれた。


そう言えばずっと一時間位
歩いていたっけ

「これは、ヨモギとおからの焼き
菓子だよ。
 食べて、食べて‼」

   「ポリッ、美味しい
    凄く美味しいです。」
夫婦はニッコリ笑って

「沢山あるから、ゆっくり食べなさい。」
 お言葉に甘えて沢山食べた。



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