三月の向日葵
「はい、出来た」
「ありがとう。芳子ちゃん」
「女の子だもの。髪は女の命でしょ」
にっこり笑う芳子ちゃん。
私も長い髪だけれど、芳子ちゃんの髪も長い。
あんなにサラサラだったらそりゃあ命だろうけど、
私のなんかなんでもないよ。
そろそろ切ろうかな。
「今日はまた絵を描くの?」
「んー。まあいろいろと」
「そう。あ、絶対安静なんだから、
あまり出歩かないのよ。またお昼に来るからね」
お母さんみたいな口調で芳子ちゃんは言って、
また病室を出て行った。
私は時計を見て、一度深呼吸するとベッドから降りた。
今日は少し肌寒い。
廊下に出てペタペタと歩いた。
カラカラ、カラカラと点滴を引きずる音が響く。
点滴を揺らしながら私は一階を目指して歩いた。
エレベーターに乗ると今日は空いていた。
チンと音がして扉が開く。
一階に行くと騒がしさが溢れてきた。
相変わらず看護師や医師が忙しなく動き回ったり、
患者やその家族が集まっていたりして賑やかだった。
中庭に行くと、一人の少年が座っていた。
葵だと思った時には、葵は振り返って私の姿を捉えていた。