輪舞曲-黒と白のcaprice-
罰の悪い顔を見せるユリアに対して胸をぽんと叩き、“コウ”と真名を呼ばれたその男は彼女を安心させるような動作を見せるけれど当の本人はどこゆく風といった様子。それに目もくれてはいない。
「…なんて、戯言は差し置いてそろそろ本題に入るわ。
…夜の統治者は制したのか?」
風向きが変わり、穏和な風が禍々しいものへと変貌を遂げ、それは総てと呼ばれている男から醸し出されている雰囲気からくるものだ。
「……………確実に仕留めてきた。」
少しの沈黙の後、ユリアは事実と真逆の事柄を悪びれもなく告げる。
「(…アサギが実はまだ生きてて、霊体になって何故かあたしの隣にいるなんて言っても信じないだろうし。かと云えしくじったと認識されればあたしの沽券に拘わる。)」
「…そう。さすがだねー。正直、ユリアちゃんにはちょっと無理難題だったかなぁって不安だったけど任せて良かったよ。
それに夜の統治者を相手にしてその程度の怪我なら安いもんだね。」
「どういう意味よそれ」
侮辱ともとれる言葉にまたひとつユリアの眉間の皺が増える。しかし先程のように、攻撃を加えるような行為は見せない代わりに不貞腐れてベッドに寝転び、うだうだと独り言を吐いている。
そして、瞑想を始めるかのようにユリアは時間にして秒数間、固く瞳を閉じていた。