輪舞曲-黒と白のcaprice-
意外と的を得てる発言を零すアサギ、無言で見据えるあたしに興味を無くしたように窓から見える小さな小鳥の囀りと羽ばたきを愉しげに見つめ始める。その沈黙を叩き壊すように廊下から聞こえる鼓膜を劈く甲高い声。
「あたし怖いわそんなの!それならこんなとこ居れたもんじゃないわよ!」
「ちょっと聞こえるわよ!あくまで噂なんだから真に受けないで頂戴。」
僅かに聞き取れた会話。どうやらナース達の井戸端会議のようだ。しかし…解せない事が一つ浮上する。
「意味わかんない。此処は非認可の闇病院。獰猛で常識外の奴らがわんさかと群がる中、あいつらみたいな高飛車ナースなら殺人鬼の対応ならお手の物でしょ。何を恐れる事が…」
『うぶだね、ユリアさん。君は街で流れるある流行りの噂話を知らないの?
うら若き乙女であればー…知らぬ者はいない一種の都市伝説。』
燻んでナースたちをせせら笑うあたしを横目にして、小鳥たちを見て愉しげに微笑むようにそのまま微笑みをあたしに向けてアサギは口火を切る。
「都市伝説?」