双星の煌めきは月夜に魅せられて


「私は姫やってた時は一度もこんな目には遭わなかった。だって、桜蘭の情報は機密なんだから!」


「そりゃあそうだろ、誰もお前が姫だったことは知らねーはずだ。ってか無かったことにしてる」


「……っ、そんな」



わざわざ傷をえぐらせることをしなくてもいいでしょ、渋谷凛太郎。


こういう上から目線で話すような人はどうも印象が悪くなってしまう。


社会を知らない暴走族だから仕方ないのだけれど。



「じゃあ、なんで鬼清が私が姫だって知ったの?
しかも現姫だって勘違いしてたみたいだよ……!」



目を閉じながら、きっぱりと言い切ったなずなは本当に偉い子だと思う。


1番怖い思いをしてるのはなずなだからだ。



「そんなのお前が広げた以外に何があるんだよ!」



もう凛太郎はなずなのことを全面的に信用してないようだ。


それでも信じてほしいという気持ちが水の粒となってなずなの目からこぼれ落ちた。

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