クールな御曹司と愛され新妻契約
「わぁ……今夜も凄く美味しそうですね。いただきます」

両手を合わせた彼は長い指先で箸を取り、美しい所作で料理に手を付ける。
もぐもぐ、と頬張って、次第に青い双眸を煌めかせた。

「……どうでしょうか?」

「山椒の香りがたまらないですね。鰹のタタキも皮が香ばしくて、生姜やミョウガとよく合ってます」

お酒がすすみますね、と彼は日本酒を煽って幸せそうな顔をする。
その仕草が可愛くて、私は思わずへにゃりと微笑んでしまった。

冷泉様は現在二十九歳で、お仕事はお父様が経営されている一流企業『株式会社冷泉ビバレッジ』の副社長をされている。

冷泉ビバレッジと言えば清涼飲料や健康飲料の製造と販売等を行う大手清涼飲料メーカーで、売上高は三千億円を超える昭和四十年創業の有名企業だ。

本社ビルは渋谷区に置かれており、従業員数は約五千人。
二千年代に入ってからは、海外事業も展開しているらしい。

誰もが飲んだことのある人気飲料を多く排出しており、コンビニやスーパーには歴史ある人気飲料だけでなく、いつも目新しい季節商品や新商品が並んでいる。
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