クールな御曹司と愛され新妻契約
「――麗さん!」

名前を呼ばれて顔をゆるゆると上げる。

慌てた形相の千景さんがロビーのソファに座っていた私を見つけ、丁度こちらへ駆けてきているところだった。

もしかしたら、あれから実友さんが宣言通り会場内で彼を捕まえてくれたのかもしれない。

……やっぱり、実友さんは親切な方だ。
千景さんを誘惑するなんてこと、絶対にありえない。


けれども実友さんには、あの女性たちに囲まれた千景さんをその輪から引っ張り出すことができる自信があったのだと感じて、なんだか切なくなった。

実友さんへ、純粋な感謝の気持ちだけを抱きたいのに、私の心には黒いシミが少しずつ広がる。


こんな惨めな今の自分を、千景さんに見つけてもらいたくなかった。
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