クールな御曹司と愛され新妻契約
急いでここへ来てくれたのだろう千景さんは、少しだけ息を弾ませながら前髪を掻き上げ、ソファに腰掛けていた私の前で、目線を合わせるように跪く。

「事情は実友から聞きました。大丈夫ですか? どこか怪我はしていませんか?」

心配そうにそう言うと、私の頬や頭や指先に触れる。

「大丈夫です。怪我は、していません」

口角を上げてニッコリとしたかったのだが、なぜだか上手に表情が作れない。

今までは気丈に振舞えていたのに、彼の手の温度を感じた部分から、私の強がりの鎧が脆く崩れていく。

彼が眉を下げ、長い睫毛に覆われた青い瞳を伏せながら、「ごめん」と口にした瞬間、私の唇は脳の指令を無視して戦慄き、熱くなった眦から、ぱた、ぱた、と涙が零れ始めてしまう。

……あれ? なんで、涙が出てくるんだろう。

こんなところで、泣いてなんかいられないのに。


「ごめんなさい。全部、俺があなたを一人にしたせいです」
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