クールな御曹司と愛され新妻契約
酷い罪悪感と恐怖心にかられて心臓が鼓動を早め、視界が黒い絵の具でぐちゃぐちゃに塗りつぶされていく。

今、すべてを決断するには早計過ぎるのかもしれない。

けれども私が取るべき行動は、当たり前だが、たったひとつしかないのだ。

だったら、彼から切り出してもらうよりも、自分から切り出してこの恋心に決着をつける方が良い。


決意とともにごくりと飲み込んだコーヒーが喉を伝う音が、いやに静かな部屋に響いた。





「十五分ほど前から、中で奥様がお待ちですよ」

突如、しんとした空間に近づいてくる足音と話し声が聞こえてきた。

肩を落としていた私は、戸惑いながらドアの方へ視線を向ける。どうやら、千景さんがこのフロアへ帰って来たらしい。

彼が話している相手は、秘書の実友さんだろう。

こんな……深い悲しみと罪悪感に苛まれて放心しているような状態で、二人と上手くお喋りを楽しむ余裕は、今の私にはない。

逃げ出したいような気持ちに駆られながら、膝の上でキュッと拳を握り締める。

そしてドアノブが捻られた瞬間、「お待ちください副社長」と彼女が千景さんに待ったをかけた。
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