クールな御曹司と愛され新妻契約
「殴られないだけマシでした。お義母さんが『そもそもの原因は私達なんだから!』とお義父さんを諌めてくれなければ、今頃絶対に頬が腫れていたと思います」

まさか、契約結婚のことを両親に包み隠さず話して、結婚を認めてもらうために再び説得してくるなんて。

それほど彼は私のことを真剣に考えてくれていたのに。
私は……心ない酷いことばかり、言ってしまった。

「ごめんなさい。私、自分のことばかり考えて……勝手に勘違いして……っ」

「まあ、実友との仲を疑われたた上に、あなたに出て行かれたのは……正直、こたえました。しかしこれも、あなたの受けたショックを考えれば妥当な罰だ。甘んじて受けます」

心の中があたたかな安心感で満ちていく。
互いの想いが通じ合うこととは――〝確かに愛されている〟と実感することとは、どれほど奇跡的で幸福なことなのだろう。

艶やかな黒髪を整えながら、照れくさそうに微笑みを浮かべた千景さんが、今までよりももっともっと愛おしく思えて、私は目元を赤く染めたまま彼に見惚れてしまう。

「麗さん。これから先の俺の人生で、あなたを何よりも一番に大切にさせてほしい。――俺と、結婚してください」

< 176 / 192 >

この作品をシェア

pagetop