クールな御曹司と愛され新妻契約
幼馴染は地方の大学へ行き、私は一人暮らしを始めたため実家が隣でも出会わなかったのだが、父の話によると、最近転勤になり東京へ戻ってきたらしい。

それにしたって、いくら私が恋愛経験がなく今後も恋人も出来そうにないからとはいえ、元恋人でもなければ初恋の人でもない幼馴染に結婚してもらう義理は無い。

ましてや罰ゲームで告白してきた相手だ。
私が恋愛に臆病になったそもそもの元凶には、今さら近づきたくもなかった。

「ただ、私の両親はもともとこのお仕事に反対していて、今までも『早く結婚しろ』と煩かったので、幼馴染を食事に誘っては勝手に未来を語らってるみたいなんです」

特に頑固で昔気質の父は、『ハウスキーパーとして他人に仕えるのではなく、夫や家族に尽くせ』と勝手な持論を振りかざしてくる。

「この間も『そういうのはやめてほしい』と言ったんですけど……父は譲る気がないみたいで、『麗の誕生日に実家に婚約者を連れてこなければ仕事を辞めて結婚しろ』とまで言い出して……」

就職してからというもの、毎日仕事が楽しくて仕方がない。

老齢のご夫婦のご旅行先に忘れ物をお届けしたり、幼稚園に通われているご兄弟にリクエストされたキャラ弁を作ったり、予定日よりも早く陣痛が始まった娘さんにご家族の代理で付き添って病院へ向かったり。
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