クールな御曹司と愛され新妻契約
長男の父親がその座に着任したことで、創業から同族経営を続けていた我が社では当然取締役副社長には次男の伯父が就任するものだと思われていたが、会長職に着いた祖父の判断により、その地位には伯父ではなく、当時二十六歳だった若造と言われても仕方のない年齢の俺が就任することとなった。

大学卒業後はイギリスの企業に就職して武者修行、冷泉ビバレッジには入社して一年未満という経歴の俺が副社長になるということで、当然社内では長年伯父の側にいた幹部が荒れ、仕事には邪魔ばかり入り、どうやって足を引っ張ってやろうかと画策する年上の男達の汚い争いに巻き込まれることになる。

伯父も表面では『千景君は優秀だからね』なんて笑顔で言いながら、裏では俺がいつ転落するかと手をこまねいていた。


しかし俺は、悠長に取締役副社長の席に座ったまま波風を立てぬよう穏便に過ごすタイプではない。

現に先代までに開発した自社ブランド飲料は種目の多さだけでなく、違いに競合してしまうような飽和状態を迎えており、冷泉ビバレッジは創業以来最も深刻な非常事態に達していると感じていた俺は、入社して以来ずっと改革構想を練ってきた。
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