クールな御曹司と愛され新妻契約
それから約一年が経った四月下旬。
祖母より、『彼女が結婚するらしい』と聞かされ瞠目した俺は、胸を埋め尽くす後悔や絶望感と向き合うのに時間を要した。
結婚前の彼女と食事をする最後の機会では、彼女の門出を祝福しなければならないと理解していながらも、どうしても悲しみや嫉妬が渦巻く胸中を抑えることができず、酒を飲むペースが自然と早くなる。
けれども、そろそろ……この恋心にけじめをつけなくては。
そう思って唇を開いた俺は、彼女の結婚相手が、彼女のトラウマの元凶でもある幼馴染だと知って、沸騰するかのような怒りを覚えずにはいられなかった。
過去、彼女に消えない傷をつけただけでなく、善人面して彼女を手に入れようとする卑怯な男に彼女の幸せなど願えるはずもない。
麗さんに対する独占欲に頭が支配されていた俺は、〝契約結婚〟ならば彼女の心の安寧を祈りつつ、彼女らしい幸せを掴んでもらう助けになれるのではないかと思い至り、即座に持ちかけた。