クールな御曹司と愛され新妻契約
ふと、暖色ライトが灯るエレベーター内で鏡に映っているオフィスカジュアル姿の自分と目が合う。

似合ってる? おかしなところないよね?

普段のスーツ姿とは違ったミントブルーのカーディガンとブラウスに、淡いイエローのミモレ丈のフレアスカートという初夏らしい出で立ちを念入りに確認しつつ、乱れた前髪を手櫛で直しながら……
しまった、監視カメラがあるのに恥ずかしい! とハッと我に返り慌てて鏡から離れた。



私――三並 麗(みなみ うらら)は〝麗〟という大層な名前とは反対に、三つの〝並〟が苗字通りに揃ってしまった完全な『名前負け女子』である。


黒目がちだが目尻の下がったパッとしない顔、平均身長と体重、更に胸のサイズもごくごく普通。さらに胸下までのまっすぐな黒髪に至っては、勇気が足りず一度も染めたことがない。

勉強も部活も人並みに頑張り、人並みに良い大学に進学し、仲良しの友人も普通にいる人並みの人生を送ってきていたけれど、なぜだか恋愛だけは人並みとはいかず、二十五歳にもなるのに恋愛経験はゼロ。
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