クールな御曹司と愛され新妻契約

高校生の時に幼馴染に告白され、突然何!?　と混乱しながらも正直に『ごめんなさい』と深く頭を下げて伝えたところ、
『罰ゲームなのに本気にしてんの？　自意識過剰過ぎだろ』
と嘲笑されながら言われたことが今だにトラウマらしい。

それ以来、告白されるという行為が怖くなっただけでなく、〝自意識過剰〟という言葉に恐怖を覚えてしまい、〝私を真剣に愛してくれる人はいないのではないか〟という気持ちはずっと消えずにいる。

あれから八年。最近やっと、自身に芽生えた恋愛感情と向き合う決心がついたものの……。
それは、相手へ打ち明ける予定もない淡い片想いを募らせる、密やかな恋だから。

告白できない相手だからこそ『私を愛してほしい』なんて考えずに済むので、自意識過剰という言葉に怯えずに済んだ。


そんな私が唯一持っている〝麗かなもの〟と言えば、『仕事をしている時間』だろう。

大学卒業後に入社した、老齢の女社長が経営している首都圏エリアを主なターゲットとしたハウスキーピングサービス会社『EmilyMaids』は、創業五十年の老舗。