クールな御曹司と愛され新妻契約
冷泉様のまるで生活感のない端麗な美貌からは、草食系男子どころか『絶食系男子』に見えるが、食事の量は至って普通の成人男性と同じようで。

ここでは、他のお宅で先輩と一緒に作らせていただくお洒落で少量のメニューではなく、どちらかと言うと働き盛りの美丈夫のお腹をちゃんと満たせるような、栄養がバランス良く摂れることを重要視したちょっと量が多めのものが定番だった。

「こうやって祝日にも食べたいほど、あなたの作ってくれる食事が好きなんです」

冷泉様は甘やかな美貌に、はにかむような笑顔を滲ませる。
こちらを見つめながら、少し恥ずかしげに言われた言葉に、私は思わずキュンとしてしまった。

他のお宅では家主がいる状態でのお仕事も楽しく伸び伸び出来るのだが、冷泉様だけは、心の奥に仕舞っている恋心のせいか、胸が高鳴ってしまい慣れることができない。

恋する少女のように緩みそうになる表情筋を必死に宥め、胸の高鳴りが彼に伝わらないよう、キリッとしたお仕事の顔を作った。
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