過去の精算

どんなに辛く悲しい夜だったとしても、悲しい事に必ず朝は来る。

いつもの様に出勤すると、待ち構えた様に、院長夫人が居た。

「おはようございます…」

「あら、仕事辞めたと思ったわ?
あれだけの事が有って、よく仕事なんて来れるわよね?」

仕事なんて?
貴女にとって、大した仕事じゃ無いかもしれないけど、私にとっては大切な仕事なのよ!
貴女達の顔なんて見たく無いけどね!

「私、貴女の様ないい加減な人間じゃ無いので!
でも、ご心配なく、来月いっぱいで辞めますので!」

出来るものなら、今すぐにでも辞めたい。
でも、辞めるなら1ヶ月前には、退職の意思を伝えなくてはいけない。
人員補充も考えないといけないだろうし、急なシフトの変更では、みんなに迷惑かける事になるからだ。

「あら、やだ。そんなに居るの?
貴女の代わりなんて、いくらでも居るんだから、直ぐに辞めて頂いて結構よ?
和臣も、子供の頃からずっと、あなたの事憎んでいたんですもの?
多少の同情は有っても、もうあなたの顔なんて見たく無いと思うのよ?
今すぐ辞めて頂いた方が、こちらとしても助かるんだけど?」

私を憎んでた…?
子供の頃から…ずっと…?
そうなんだ?
だから、こんな酷いこと出来るんだ?

「分かりました。
退職願いは、事務長宛に送らせて頂きます!」

私はそのまま踵を返すと、自宅へ帰り、いつでも部屋を出ていける様に荷造りを始めた。




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