過去の精算
「雇うのは良いけど…理由聞いても良い?」
「・・・・・」
「話したく無いか…?
貴女とは知らない仲じゃないし、こういう仕事だから、本来なら無理に聞くべきじゃ無いと思うけど…
私は、貴女と彼が結婚すると思ってたから…?」
「・・・・・」
何も答えない私に事情を察したのか、ママは悲しそうな顔をした。
「そう…ダメになったんだ?
彼、貴女にベタ惚れだったのに…」
ママは間違ってる。
彼の本性もなにも知らないから仕方ないけど、彼は私を愛してなんか無かった。
寧ろ、憎み恨んでいたのだ。
「1、2ヶ月だけで良いんです!
お願いします!」
「その後どうするの?」
「何処か遠くの街へ…」
「逃げるんだ? なんで?」
隣町だろうと、いつ彼に会うか分からない。
「お金の事でちょっと…
あっでも、横領や詐欺とか犯罪は起こして無いので、警察沙汰にはなりませんので」
「分かったわ!」
「それから…控え室をお借り出来ないでしょうか?」
「家にも帰れないって事ね?
好きに使いなさい」
「無理言ってすいません…」
働くあてのない私は、以前働いていた、キャバクラ・ライオンのママに雇ってもらえないか頼みに来たのだ。
ここ(ライオン)へ来る前に、他の店へも面接に行ったが、年齢的に良い顔されず、結局ここ(ライオン)へ来てしまった。
開店時間が近づくと、女の子達が出勤して来た。
「えっ? なんで?」
最初に出勤して来た、チーママの舞さんが私を見て目を丸くする。
彼女が驚くのも仕方ないだろう。
ママ同様、以前の私の事情を知っているのだから。