過去の精算
「キャサリンちゃんどうしたの?」
「えへへ…
お金が欲しくて!」
「そりゃー皆んな、お金が欲しくて働いてるわよ?」
舞さんの言う通り、皆んなお金が欲しいから働くのだ。お金が無ければ、雨を凌ぐ場所も借りれないし、食べる事も出来ない。
余る程のお金は要らないけど、せめて食べるに困らないだけのお金は欲しい。
「あれだけ稼いだんだから、彼への借金返しても十分残ったでしょう?」
「彼への借金は返せたけど、他にも借金があったんで…」
ここ(ライオン)でのルールとして、他人(ひと)の事は詮索しない。
他人(ひと)のお客は取らない。という2つのルールがある。
でも、舞さんが詮索するという事は、多分、ママから頼まれての事だろう。
「実は、母が亡くなる少し前に、祖母が倒れて…
歳も歳だったし、とても、私だけでは面倒見る事が出来なかったので、ホームへ入れたんです。
その時に、沢山のお金がかかって…
院長先生にお借りしたんです。
母の入院費も分割にして貰いましたし…」
「そう…
で、今お祖母様は?」
「母が亡くなってすぐ、母を追うように逝ってしまいました…」
「そうだったの…
大変だったわね?」
「いえ、私には町の人達が居ましたから…」
「でも、その町からも離れるんでしょ?」
心配する舞さんに、“ 新しく人生始めるなら、新しい土地が良い ” と明るく言ったが、舞さんの顔は曇ったままだった。
「舞さん、そんなに心配しないで下さい。
私、もう前向いてるんです。
それに、都会の方がイケメン多いと思いません?
私、イケメン芸能人と恋に落ちる予感がするんですよね?
もし、芸能人と結婚する事になったら、舞さんも式に招待しますね?」と私は笑った。
「キャサリン…」
「私、舞さんに負けないくらい、稼ぎますよ!」
その時、他の女の子達も出勤して来て、その中に朱里さんもいた。
「あっ! キャサリンちゃんだ!
久しぶり! 戻って来たの?」
「うん!
男に騙されて、借金地獄になっちゃった!」
「マジ?」
「マジマジ!」と言って大口を開けて笑った。
空笑いでも良い。
笑ってるその間は、嫌な事全て忘れられる。