過去の精算
分かってると言ったヒロ君は、私の言った事を忠実に守っていて、飲み慣れないウイスキーの後に彼は何度も炭酸水を飲んでいた。
酔いが回って来てるのだろう。
ヒロ君の顔が赤くなって来てる。
「ヒロ君大丈夫?」
「これくらい大丈夫!
ダブルでおかわり!」
ヒロ君の注文に、“ ヒロ、顔赤いぞ? もうやめとけ!” 心配するトミー君だが、ヒロ君の耳には届いていないようで、再びおかわりと言う。
「ホント顔赤いよ?」
「酔ってない! 店ん中が暑いんだ!」
酔ってる人に限って、酔ってないって言うんだよね…
大人の男ぶりたい年頃なのかな?
「そっか? 酔ったんじゃなくて、店の中が暑いから、顔が赤いんだ?」
そんなに無理しなくていいのに…
可愛い。
さっきより更に量を減らし、暑いなら冷たい方が良いよねと、氷を入れウイスキーが薄まる様にとグラスの中の氷を回した。
「ねぇ、君達腹空いてない?」
「寮で夕飯食べて来たけど、俺達、いつも居酒屋ばかりで、こう言う店初めてだから…
なにか食べながら飲んでないと、酔っ払いそう…」と、言ったのは、ハイボールを飲んでいる林君だった。
そっか、彼等が行くなら居酒屋だよね?
安い居酒屋で、安い料理を摘みながら、楽しくお酒を飲むのが、年相応だよね?
「よし!
悪酔いさせてはいけないから、おねぇさんが美味しいものご馳走してあげる」
私の言葉に皆んなは喜んでいたが、ヒロ君だけは要らないと言う。
「お金の事なら、心配しなくても良いよ?
今日、ヒロ君には一杯(一本)ゴチになってるからさ?
そのお礼って事で?」
私はカウンターの中へ入り、お皿にキンピラと、切り干し大根煮、それから鯖の南蛮漬けを乗せて彼等に出してあげた。
「はい、本日の特別メニューだよ!
あっ朱里ちゃん、このコ達のチャージ料とおつまみは伝票につけないでね?
私の奢りだから?」
「え? でもママに…」
「今日は特別!
ママには、後で私から話しておくから?」
彼らは “ 美味い ” と喜び、トミー君は、“ 田舎のお袋の味がする ” と言って喜んでくれた。
田舎のお袋の味って、言われるのはちょっと微妙だけど、でも、美味しいって言われるのは嬉しい。
「美味しいって言ってもらえて、おねぇさん凄く嬉しい!
あれ、ヒロ君食べないの?」
「俺は要らない!」
「ヒロ、お前酒弱いんだから、食べながら飲めよ!」
トミー君の忠告に、“ うるせぇー ” と、言うヒロ君だった。
ならば…