過去の精算
お風呂の帰り買い物して店に戻ると、店の前にはヒロ君が立っていた。
「まだ開店前だけど?」
「昨夜は随分迷惑かけたみたいだから、謝りに来た」
「そう。 良い心がけね?
開店前だから、大したもの出せないけど、入る?」
頷く彼に、“ 二日酔いは初めて?” と聞く。
「え?」
「飲み慣れない物飲んで、あれだけ醜態晒してたら、二日酔いになった事くらい分かるわよ?」
ヒロ君は、“ すいません ” と謝り、俯いた。
「何も食べてないんでしょ?」
しじみの味噌汁と出汁巻卵を作り、彼に出してあげた。
「しじみ汁には二日酔いに良いと言われてるオルニチンが含まれていて…」
「え?」
オルニチンについて説明しようとしたけど、必要無いと思い止めた。
「良いから飲みなさい!
出汁巻卵には、そこにそえてある大根おろし乗せて食べね?」
卵焼きはちょっとと言う彼に、なら大根おろしだけでも食べなさいと言ってやる。
「あの…キャサリンは本当に結婚してるの?」
えっ!
急になに?
まさか、トミー君が言ったこと…
「ここの私は、全て偽物。
ヒロ君が今見てる私もね?」
「俺と付き合ってくれない?」
はぁ…
私が言ってる意味分かんない…か…?
「偽物はいつか消えるの! 私もね?」
「でも、今はいる!」
カウンターの上に出ていた私の手を、彼は握った。
「ヒロ君とは付き合えない」
「歳が離れてて俺がガキにしか見えないから?」
「確かに、歳は離れ過ぎてるわね?
私、いくつか知ってる?
私が中学の時に、ヒロ君達が産まれたのよ?
これはもう犯罪でしょ?」
笑って話を終わらせ様としたが、そうはいかない様だ。
「でも、それだけじゃないの…
私、二度と恋はしないって決めてるの!
だから、ヒロ君の気持ちは嬉しいけど、付き合えない。 ごめんね?」
「それって…忘れられない男(ひと)がいるから?」
「ある意味そうかもね?」
生まれて初めて好きになった人に、愛してると言われ、それを本気にして私も愛してしまった。
でも、実際は愛されてなくて、寧ろ、憎まれていた。
「さぁ、開店準備あるから帰ってくれる?」