過去の精算
その日からヒロ君は、毎日、松の湯から帰る私を店の前で待つ様になった。
初めこそ店に入れていたけど、流石に1週間も続くと、私もめんどくさくなり、今は無視して店にも入れない様にしてる。
無視する様になって10日が過ぎた頃、彼は営業時間内に顔を出す様になった。
「毎日通って貰っても、私の気持ちは変わらないよ?」
「じゃ、1日だけ俺につきあってくれ!
一度くらいチャンスくれても良いだろ?」
「断る!」
「なんでだよ?」
本当は、2ヶ月働いてお金を貯めてからここ(ライオン)を離れようと思ったが、ヒロ君の事を考えたら、早くここを離れた方が良い。
「私、ここ辞めて東京に行くの」
「はぁ!? いつだよ?」
「今週末でここ辞める!」
私達の話を隣で聞いていた、朱里ちゃんがびっくりして、大きな声を上げた。
「ええっ! キャサリンちゃん辞めるってホントなの?」
朱里ちゃんの声に、ママや舞さんもどういう事かと驚いている。
まだ、ママにも誰にも話していなかったから、驚くのも仕方ない。
「キャサリン…」
攻められる様なママの眼に、動揺隠せない私がいる。でも、決めた事だ。
「…ママ、後でちゃんと話します」
店を閉めて話を始める前に、ママと舞さんからの厳しい視線に、思わずたじろいでしまう。
「…舞さんが言った通り、ヒロ君は私に好意を寄せてくれてました。
でも、私は彼の気持ちには応えられない。
彼の為にも、私、ここを離れた方が良いと思うんです」
「そうね? ちょっと彼ストカー化して来てるものね?」
ママの言葉に胸が痛む。
彼がバカな事するとは思わないけど、周りに迷惑かける前に、私に出来る事はしておきたい。
「それより、前谷総合病院が無くなるって知ってる?」
嘘っ…
病院が無くなる?
そんな訳…ない。
ママからの突然の話に私は驚きを隠せない。
「少し前から買収計画があるって、噂に聞いてたのよね?
なんとかって言う大きな会社が、あの土地を欲しがってるとかって?
仲介は、確か…楓 銀行だって話よ?」
楓 銀行…?
どうして?