過去の精算

「あなたは、町の人達が居たから生きて来れたって言ったけど、このまま町の人達と離れてしまって良いの?」と、舞さんは言う。

舞さんの言葉に、胸が痛む。

「私に…犠牲になれと…?」

「違う。後悔して欲しく無いだけ!」

舞さんと同様に、ママも後悔して欲しく無いと言う。

「後悔…」

ママは話を続けた。

「さっき話した、木村沙織さんにね、私、聞いた事があるの、彼と結婚して幸せかって?
いつも一緒に来てたのに、突然彼だけが来なくなったから、何か有ったのかと思って?
でも、彼女は迷わず、“ 幸せです ” って笑って言ったの」

結婚してないのに…?
あの人に捨てられたのに…!?
それでも、お母さんは幸せだったの?

「まぁ医者の彼が、暴力振るう様には見えなかったし、見た感じ彼女にも殴られてる痕跡はなかったから、多少なりの夫婦喧嘩はあるだろうけど、彼女の笑顔みたら幸せなんだと思ったわ?
その時、彼女に何が起きてるか分からなかったし、彼女が幸せならこれ以上私が聞く事じゃ無いと思った」

「ママは、その人が本当に幸せだったと思いますか?」

「さぁ?
他人(ひと)の心の中は分からないけど、彼女の笑顔からは、幸せなんだと感じたわよ?」

「そうですか…」

「貴女が、今どう言う立場で、何を苦しんでるか分からないけど、後悔だけはして欲しく無い。
彼は、まだ貴女のこと愛してるわ?
貴女も同じじゃ無いかしら?
自分の気持ちに蓋をして、去ると言うなら私は何も言わない。貴女の人生だもの?
東京へ出ると言うなら、お店も紹介してあげるし、他にも、私に出来る事があるなら力になってあげる?」

「…ありがとうございます…少し考えさせて下さい」




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