過去の精算

ママ達と話してから、2日が経った日曜日、今日はここ(ライオン)で私が働く最後の日。
常連さんが集まってくれて、私の送別会を開いてくれる事になった。
常連さんのその中には、ヒロ君や、トミー君達もいた。

「ホントに居なくなるのかよ?」

「うん!」

「俺が告ったから?」

「それも多少有るかな?
でも、長くここ(ライオン)にいるつもり無かったの…」

「次の店決まってるのか?」

「まだ、決めてない。
でも、明日には決まると思う」

決まったら、教えてほしいと言うヒロ君へ私は首を振る。

「なんで!? そんなに俺が嫌いか?」

「違うよ? ヒロ君の事好きだよ?
トミー君や林君と同じくらい好き」

ガキ扱いかよと怒るヒロ君へ、私はガキじゃんと答えた。

「はぁ!?」

「いつまでも、お姉さんの影追いかけてガキじゃん?シスコンじゃない?
本当にお姉さんは優しかった?
喧嘩した事ない?
人は変わるんだよ?」

彼の様に…

「子供の頃、本当にお姉さんを嫌いだって思った事ない?
想い出ってね、自分の都合の良い様に書き換える事出来るんだよ?

今のお姉さんに会いに行った事ある?
お姉さん、昔のまんまだった?
ヒロ君が思ってる様に子供の頃と変わらず、優しいお姉さんだった?
手に入れたいモノがあれば人は変わるよ?

特に好きな人が出来たら、親も捨てるし兄弟だって捨てる。
それが愛だよ?」

「・・・・・」

「美しい想い出は、ヒロ君だけの想い出にしなきゃ!
お姉さんだってそう望んでる筈だよ?」

「そんな事、あんたに言われたく無い!」

「そうだね?
私はヒロ君のお姉さんに会った事もないし、お姉さんとの想い出も無い。
ヒロ君とお姉さんだけの想い出だもん?
だから、それを誰かに重ねたり比べたらダメ!」

「・・・・・」

元気でねと言うと、ヒロ君は帰って行った。

ヒロ君ごめんね?
君ならきっといい恋が出来るよ?




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