過去の精算
嬉しそうに分かったと言う父に、彼はもう一つ条件が有ると言う。
「小さくても構わないので、未琴との結婚式を挙げさせて欲しい」
「カズ!? 結婚式はしないって、話終わってるじゃない!?」
「親父ダメかな?」
「ダメに決まってるじゃない!」と言う私に、彼は “ 未琴に聞いてない ” と言う。
はぁ!?
私達の結婚式の話に、私が関係無いってどういう事よ!?
「俺達の事を公表しないなら、せめて、バージンロードだけは、父と娘で歩いて欲しい。
身内だけの小さなものなら、変な噂も流れないだろ?」
カズ…
「そうよ! そうしなさい?
結婚する女にとって、バージンロードは夢よねぇ?私も父とバージンロード歩きたいわ!」
ママがバージンロード…歩きたい?
てか、ママいくつなの?
「ママ…ママのお父さんって…勿論、健在ですよね?」
「え? 生きてないわよ!
とっくにあの世に逝っちゃってるわよ?
死んだのいくつだったかな? 確か父は97だったわね?
ホント長生きしてくれたわ!」
97…
しかも亡くなってるのに、父とバージンロードを歩きたいって…
ママ・・・
「未琴さえ良ければ、私は歩きたい」
「未琴?」
笑顔で呼ぶ彼に、私はこれ以上何も言えない。
「分かった」
と言うと、彼は白衣のポケットから、小箱を出し私に向けた開けた。
中には、眩しい程に輝く、大きなダイヤの石の付いた指輪が入っていた。
えっ!?
「給料の3ヶ月って言うけど、どっちの病院の給料か分からなくて、取り敢えずこんなモノかなって思って?」
「ちょ、ちょっと待って!
どっちの病院ってどう言うこと?」
「あー、未琴にはまだ、話してなかったな?
俺、まだニューヨークの病院と契約解消してなくて、他にも、いくつかの国の病院と契約して、呼ばれたら行くって感じ?」
はぁ!?
「まぁ簡単に言えばフリーランス?
だから、未琴が海外まで追いかけるって、言ったのもあながち間違ってないよ?」
ママは「だからお金持っていたのねと」笑う。
「私聞いてない!」
「今、言った」
今言ったって…
そんな簡単な問題じゃ・・・
医者のフリーランスって、漫画やドラマの世界じゃなかったの?
てか、じゃ、この病院はどうなるの?
彼から、フリーランスの医師と聞いて、何も知らなかった私は、呆然とたちつくしていた。
「琴…未琴? おい未琴!」
「えっ?」
「大丈夫か?」
「え? ええ、大丈夫。
ちょっと、あまりのダイヤの大きさに驚いちゃって…」
「気に入らなかったら、他のに変えても良いぞ?」
「ううん。有難う…」
私は受け取ると、箱の蓋を閉めそのまま鞄の中にしまった。
ママの嵌めて見せてと言う言葉に、後で一人でゆっくり嵌るからと言った。