過去の精算

(トントン!)
玄関ドアをたたく音。

だれ?

ドアを開ければ彼だった。

「コラッ! ちゃんと確認してから開けろって言ってるだろ?」

「ごめん…散らかってるけど、上がる?」

あゝと言って彼は部屋に入った。

「何飲む? あっ全て(みんな)もう詰めちゃったんだ。
ごめん、そこの自販機で買って来るね?」

「飲みモンなんて良いから、とにかくどこでも良いから座れ!」

部屋の中は引越しのダンボール箱で埋め尽くされていて、座る処も無い状態なのだ。
引越し先は、父の住む家になっていて、彼も戻る事になってるが、それもどうなるか分からない。

「で、話はなんだ?」

「え?」

話があるなんて、私は言ってない。
彼が勝手に来たのだ。
話があるのなら、彼の方だろう。

「指輪が気に入らないなら、はっきり言えば良いだろ?」

「誰も気に入らないなんて言ってない!」

「じゃ、なんで嵌めてくれない?」

「それは・・・」

「それは?」

「私には分不相応だと思う…」

「それだけじゃ無いよな?」

彼は隠し事は無しにしようと言うが、隠し事していたのは彼の方だ。

「カズ…私達結婚しない方が良いのかも…
その方が・・・
フリーランスのままの方が…カズは、沢山の命を助けられる。
でも、病院を継ぐとなると…今までの様には動けなくなるでしょ?」

「なんだ、その事か?
その事なら、話は付いてる」

「え?」

「海外の患者で、俺にオペして欲しいって人は、富裕層の人が多い。
そうゆう患者には、日本に来てもらい、うちの病院でオペをする。
その為にもシーディーやアンジェラを呼んだんだからな?
二人を結びつけた恩は、しっかり働いて返してもらう」

「え? じゃ…」

彼は、フリーランスは辞めて、以前からの野望の前谷総合病院の院長の椅子を頂くと、笑う。

「じゃ、私達結婚しても大丈夫なの?」

「本当に困ったお嬢さんだな、君は?
始めから、君に惚れてるって言ってるだろ?
ほら、指輪出して?」

彼から貰った小箱を鞄から出すと、彼は小箱に入った指輪を私の左手薬指に嵌めた。

重っ…
これ何カラットあるの…?




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