過去の精算
今から誓いの言葉と言うところで、彼のタキシードのポケットに入ってる携帯電話が鳴った。
参列者達からはブーイングがあがり、彼は顔を歪める。
「出て!」
「でも…」
「早く!」
彼は大きなため息をついて、電話に出る。
「えっ! K町でガス爆発が起きた!?」
えっ!
「うちの病院にも、多くの人が運ばれてくる」
「早く行って!」
グッドマンさんは、
「クッソー、マジかよ? カズ、特別手当つけろよな!」と言ってタキシードのポケットから、車の鍵を出した。
そして、ブレナさんも、
「このドレスのレンタル料、高かったのよ! 出してよね!」と言って、両手でドレスの裾をたくし上げる。
私には、二人がいつでも行けると、言ってる様に見える。
三人が走りだそうとした時、みち子さんが、彼を止めた。
「和臣、せめて誓いのキスくらいして行きなさい!」と、みち子さんが言うと、彼は愛してると言ってキスをしてくれた。
「私も愛してる。急いで!」
グッドマンさん達の後を追う彼に、父は一緒に行こうと言うが、
「親父は、そこの鬼姑が、未琴をいじめない様に見張っててくれ!」と言って、走って行った。
良かった…
二人の間には、もう、蟠りは無いように見える。
「それにしても、前代未聞よね?
知らない人達と、一緒に式を挙げるって聞いた時は驚いたけど、途中で花嫁一人置いて、仕事に行くなんて聞いたこと無いわよ?」と、ママは呆れていた。
あの仕事に対する彼の姿に、惚れたんだもん!
実は、私達が式を挙げると聞いたブレナさんは、便乗させて欲しいと言ってきたのだ。
最初は彼も反対していたが、認めないなら、フリーランスに戻るとブレナさんに言われ、仕方なく彼も許可したのだ。
「未琴ちゃんも、良く許したわよ!
普通、許さないわよ?」
ですよね…
でも、彼らのあんな姿が見れて、私は良かったと思う。