過去の精算

休憩室へ行く間、何人かのナースに冷たい視線を向けられた。

なんで、私があんな目で見られなきゃなんないのよ?

イラつきながらも、用意していたお弁当を食べていると、休憩室の扉が開き、誰が入って来たかも確認せず、ただ挨拶だけした。

「お疲れ様です」

何も返ってこない事を不思議に思い、顔を上げれば、またしても前谷君が立っていた。

なんで、この人がまたここに来るのよ?

「飯か?」

見りゃわかるでしょ?
「何かご用ですか?」

「お袋が、あんたを食事に誘って来いって煩くてね?」

「その件でしたら、お断りしました」

「そんなこと言わずに付き合ってやってよ?」

「お断りします!」

その時、休憩室の扉が再び開き、数人の事務員が休憩の為に入って来た。

「お疲れ様です」

いつもの様に、入って来た人達に私は挨拶をしたが、彼女らからはなんの挨拶も戻って来ず、彼女らの視線は既に前谷君へと注がれていた。

『あれ、若先生どうされたんですか?』
彼女達は、いるはずのない彼を見て、テンションが上がり既に高揚してる様に見える。

「食事に誘いに来たんだけど…」

余計な事を言わないでよ!

『えっ? 木村さんを?』

「皆さんを昼食に招待したいそうですよ?」

『えっ! 本当ですか?』

「あっあゝ・・」

興奮状態の彼女らに、彼も違うとは言えず、仕方なく、“良かったら皆さんで?” と誘った。

『あれ、木村さんを誘ってたんですよね?
木村さんは行かないの?』

立ち上がる様子のない私を見て、同期の子が不審に思った様だ。

「いいえ、“皆さんで?” と言われたんですけど、私はお弁当持って来てるので、お断りしてたんです。私の事は気になさらず、皆さんでどうぞ?」

前谷君は、数人の子達を連れて、休憩室を出て行った。

あぁ…危なかった。
変に誤解されたら、どんな噂流されるか、それこそ、ナースの人達から、どんな目に合うか分からないわ!




< 21 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop