過去の精算
休憩室へ行く間、何人かのナースに冷たい視線を向けられた。
なんで、私があんな目で見られなきゃなんないのよ?
イラつきながらも、用意していたお弁当を食べていると、休憩室の扉が開き、誰が入って来たかも確認せず、ただ挨拶だけした。
「お疲れ様です」
何も返ってこない事を不思議に思い、顔を上げれば、またしても前谷君が立っていた。
なんで、この人がまたここに来るのよ?
「飯か?」
見りゃわかるでしょ?
「何かご用ですか?」
「お袋が、あんたを食事に誘って来いって煩くてね?」
「その件でしたら、お断りしました」
「そんなこと言わずに付き合ってやってよ?」
「お断りします!」
その時、休憩室の扉が再び開き、数人の事務員が休憩の為に入って来た。
「お疲れ様です」
いつもの様に、入って来た人達に私は挨拶をしたが、彼女らからはなんの挨拶も戻って来ず、彼女らの視線は既に前谷君へと注がれていた。
『あれ、若先生どうされたんですか?』
彼女達は、いるはずのない彼を見て、テンションが上がり既に高揚してる様に見える。
「食事に誘いに来たんだけど…」
余計な事を言わないでよ!
『えっ? 木村さんを?』
「皆さんを昼食に招待したいそうですよ?」
『えっ! 本当ですか?』
「あっあゝ・・」
興奮状態の彼女らに、彼も違うとは言えず、仕方なく、“良かったら皆さんで?” と誘った。
『あれ、木村さんを誘ってたんですよね?
木村さんは行かないの?』
立ち上がる様子のない私を見て、同期の子が不審に思った様だ。
「いいえ、“皆さんで?” と言われたんですけど、私はお弁当持って来てるので、お断りしてたんです。私の事は気になさらず、皆さんでどうぞ?」
前谷君は、数人の子達を連れて、休憩室を出て行った。
あぁ…危なかった。
変に誤解されたら、どんな噂流されるか、それこそ、ナースの人達から、どんな目に合うか分からないわ!