過去の精算
この時、既に私の知らないところで、大変な事が起こり始めていた。
だが、私がそれを知るのは、まだ、先の事だった。
「佐藤さん、本日のお会計は5,730円になります。
後ろの自動精算機でお願いします。
お大事になさって下さい」
『ありがとうございました』
もうすぐ昼休憩という時に内線電話がなった。
「木村さん、院長夫人から電話ですよ?」
院長夫人…?
「私にですか?」
持ち場を代わって貰い、電話に出てみれば、
院長宅での昼食のお誘いだった。
「折角ですが、まだ、休憩取れる状態じゃないので…」
『あら、さっきの人に聞いたら、今から貴方の休憩時間だと教えてくれたわよ?』
はぁ…
余計なことを…
「医療費の事で相談にお見えになる方がいらっしゃるので…
折角のお誘いですが、お断りさせて頂きます。
失礼します」
「木村さん、院長夫人なんだったの?」
「いえ、大した用ではないみたいでした」
大した用でないにしろ、院長夫人から個人的に電話が有ったのだから、どんな理由にしろ噂好きの人達にとっては、気になるのだろう。
ヒソヒソと、私を見ながら話しているのが分かる。
『若先生の事だったんじゃない?』
休憩終わりで戻ってきた人からの質問だった。
えっ?
なんで?
「なんで、若先生の事なんですか?」
「あなた覗いてたんでしょ?
若先生と、外科ナースのヤってるところ?」
「え?」
「そのナースが怒ってたらしいわよ?
あなたに邪魔されたって?」
邪魔したって…
あれはたまたまで、それに覗いてなんてない!
それに邪魔なんてした覚えもない!
あれは不可抗力で、あんな所で、コトをしようと思う方が間違ってる!
寧ろ私は被害者だ。
言いがかりにも程があるわよ!
「やめてよね?
関係ない私達に火の粉飛ばさないでよ?
ただでさえ、ナースの人達から良く思われて無いんだから!」
良く思われてないのは、私のせいじゃ無く、あなた達に原因があると思いますけど?
人の噂ばかりして、真実かどうか分からない事まで、言いふらしてたら、良くは思われないと思いますけど?
自分達が、普段何してるか、良く考えて見なさいよ!