過去の精算
「まだ、繋がらないのか?」
「はい…」
「まさか本当に…」
「馬鹿か?」
「はぁ!?」
「もし、連絡も取れない様な事故なら、先ずは警察か、病院から連絡が来るはずだろ?
弁護士からと言うことは、詐欺もしくは、危ない関係者絡みってとこだろ?」
「危ないって…?」
「裏の世界の人間だ」
え?
それって…ヤクザ?
「えっ! それはそれで、大変じゃないですか!」
「まぁ大変と言えば大変だわな?
どちらにしても、警察に連絡した方がいい」
前谷君に言われたとおりに警察に連絡をし、私達が到着すると同時に警察も到着した。
そして、お金を取りに来た男は逮捕された。
結局、詐欺だったのだ。
警察の事情聴取の後、前田さんの息子さん夫婦が来るのを待って、私達は帰って来た。
「良かったですよね詐欺で?
ううん。詐欺はよく無いけど、前田先生が事故に巻き込まれたんじゃなくて良かったですよね?」
「良くない!」
「は? 前田先生は無事なんですよ? 多分…」
前田先生とは、いまだに連絡は取れてない。
だから、本当に無事なのかはまだ分からない。
「連絡が取れない時点で、アイツはアウトだ!
技師としても俺は信用しない!」
「え? なんでですか?
前田先生今日当直じゃ無いんだから、連絡取れなくても、何処で何してても良いじゃないですか?」
「この町には、うちの病院しか無いんだぞ?
隣町だって、大きな総合病院はない。
もし今、大きな事故やテロが起きてみろ!」
「そんな縁起でもない…」
「絶対無いとは言えないだろ?
そうなった時、検査技師は必要になる!
俺達医師は、検査技師が居なければ、正しい診断は出来ない!
それだけ、検査技師は必要な仕事なんだ」
「必要な仕事…」
「そうだ。 だから当直じゃなくても、必ず連絡は取れる状態にしとかないといけない。
医師だけでは、患者は救えないからな!」
医師だけでは、患者は救えない…
熱く語る前谷君の横顔が、高校生の頃の彼と重なった。
もしかしたら…
彼は今も、あの頃の前谷君と変わってないのかも知れない…