過去の精算
念のために、私は前田先生に電話を掛けた。
だが、前田先生の電話は電源が切られているらしく、繋がらなかった。
兎に角、行かないと!
私が鞄を持つと、前谷君は状況を説明しなくても察した様で、車を出してくれると言ってくれた。
前田さんのお宅へ向かう車の中でも、何度も私は電話をかけていた。
「まだ、繋がらないのか?」
何度かけても、前田先生の電話は繋がらない。
「どうしよう…もし、本当に事故にあってたら…」
「なぁ1つ聞くが、あんた前田とどういう関係だ?」
「前田先生のお祖母様が、貧血で倒れた所に、たまたま私が居合わせて、お宅まで送ってさしあげたの。
それで一人暮らしと聞いて、それ以来たまにお顔を見に行ったり、連絡を取ったりしてるだけです。
前田先生のお祖母様と知ったのは、それからずいぶん後のことです」
「それで、前田と食事の約束する様な関係になった訳だ?」
「関係って…
誘って頂いたのは、今日が初めてです!
それに今日だって、ちゃんとお断りしました!」
なんで私、こんなにムキになってるんだろう…?
「俺との約束が無かったら、前田の誘い断らなかったろ?」
「そんな事…先生には関係無いですよね?
それに、私はちゃんと先生との約束守ったじゃ無いですか!
でも、先生は私との約束守らなかったですよね?」
「は? ちゃんと守ったろ?
車は国産車に変えて来たし、アパートの前にも止めなかったろ?」
国産車でも、随分高そうな車ですけどね!
この人いったい、何台の車を持ってるの?
「でも、病院棟内じゃないにしても、敷地内で話しかけましたよね?」
「は? いつ話しかけた?
俺は話しかけてないぞ!」
「今朝、出勤時に前田先生に食事に誘われてた時に、“ 今、アイツ食事って言ったか?” って私に聞きましたよね?」
「あれは、独り言だ!
俺の独り言に、あんたが勝手に答えただけだろ?
だから、俺は約束破ってない!」
独り言??
あれが?