過去の精算
翌朝、悪くも天気予報が当たってしまった。
外は嵐の様な凄い雨。
まるで、誰かが哀しみに狂ってるかの様に、雨が窓を打ち付ける。
窓ガラスを打ち付ける雨は、木枠サッシの下の方から部屋の中へと高波の様に打ち寄せる。
今日の雨は存在感を更に主張してくる。
ここ(アパート)建って何年になるのかな?
私が生まれる前からだから、軽く40年は過ぎてるよね?多分。
やっぱり窓枠、新しいサッシに替えて欲しいなぁ…
しかし、よく降るなぁ…外出するのが嫌になる。
でも、冷蔵庫は空っぽ状態だし、彼の朝ごはんも困る。
買い物だけは行かなきゃ…
着替えを済ませて、出かける準備を済ませたが、前谷君は、昨夜遅くまで私のビデオを観ていた様で、まだ夢の中。
昨夜、私は早めに母の部屋で眠ったけど、遅くまで電気が点いていたから、彼は全てのモノを観たのだろう。
私のベットで眠っている、彼の顔はとても綺麗で、思わず見惚れてしまう。
「前谷君…
ねぇ? 私、一人で行って来ていい?」
「ん〜…もうそんな時間?」
「もうすぐ10時になる。
パンもなにも無いから、ちょっと行ってくるよ?前谷君は寝てて?」
だが、前谷は起きると言って、着替え始めた。
私が顔を背けて居ると、彼はからかう様にクスクスと笑った。
「そんなに恥ずかしがらなくても、昨夜観たじゃん?」
「見てない!
観察したみたいに言わないでよ!」
「俺は観察して貰っても構わないけど?
なんならもう一度、ベットに横になろうか?」
「馬鹿言ってないで、早く顔洗ってきたら!
洗面所に新しい歯ブラシ置いてあるから!」
「へーぃ」
彼が顔を洗ってる間、テレビの前に置かれた、ビデオテープを片付けてると、一本足りないのに気づいた。
まだ、デッキの中に有るのかと、デッキを覗くが、デッキの中には入って無い。
「ねぇ、前谷君?
ビデオテープ1本無いんだけど、知らない?」
「…ごめん…観てたらテープ切れて…
修復出来ないか、知り合いに頼んでみるよ?」
「ううん。そのままで良いよ?
何度も繰り返し見てたから、擦り切れてたんだと思う。
別にもう見ることないし、そのままで良いから」
そのテープには、大きな手が器用に糸結びをしてる、映像が映っていた。
誰の手か分からないけど、私はそれを見て、糸結びの練習をしたものだ。
まだ、医大に入っていないのに…