独占欲強めの部長に溺愛されてます

ドキリとして思わず加賀美を見ると、いつになく不機嫌な顔で野々花を見た。


「あ、あの……」


どうして避けるのかなんて、理由はひとつしかない。加賀美を好きだから、あのキスに戸惑っているのだ。

好きだと言われたわけでもなければ、付き合おうと言われたわけでもない。
だとすれば、あれは加賀美の出来心。魔が差しただけだろう。
突然の雨がもたらした、いたずらなキスだったのだ。

加賀美の強い視線を逸らせず、呼吸もままならない。なんとかここから逃れたいと願う野々花に、能天気な声がかけられた。


「星さぁーん、助けてくださぁーい」


瑠璃のひと声が、野々花の呪縛を解く。ハッとして瑠璃を見てみれば、両手を上げて〝おいでおいで〟している。


「すみません、失礼します」


いい口実ができたとばかりに、加賀美のデスクを離れた。背中に刺さるような視線を感じたのは野々花の気のせいか。


「あのですね、これなんですけどぉ」


瑠璃のパソコン画面を覗き、「うんうん」と相槌を打つ。視界の隅に入る加賀美の姿を見ないようにするのに必死になった。
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