独占欲強めの部長に溺愛されてます

「父親の仕事の関係で両親は海外なんだ」


加賀美によると、誰も住まなくなると家が傷むからとマンションを引き払い、一年前からここで暮らし始めたという。
ひとりで住むには広すぎるだろう。

ふと、どこからかなにかを引っ掻くような、足音のようなものが聞こえてきた。その音が近づく方を見た野々花は、思わず「えっ」と思わず声を漏らす。

ハァハァハァと息を切らせ、ゴールデンレトリバーが床を蹴りながら駆け寄り、加賀美めがけて飛びかかってきたのだ。
それによりバランスを崩した加賀美が、その場にしりもちをつく。


「ちょっ、待て! おい! わかったから!」


加賀美が制するのも聞かず、己の感情のおもむくままに顔を舐め回す。よほど嬉しいのか、自制が効かないらしい。

会社では仕事をそつなくこなすエリートが、犬に好き勝手にやられているというギャップが野々花の心をくすぐる。加賀美には悪いが、犬同様にかわいい。

ひとしきり加賀美と抱擁を堪能したゴールデンは、ようやく彼を解放した。そこで初めて野々花を見つけて尻尾を振る。警戒心のかけらもない。

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