もう、我慢すんのやめた


そんな佐倉の言葉に今度は茉佑さんがグッと下唇を噛んで、解放された手を反対の手で握りしめた茉佑さんはそのまま走り去ってしまった。

結局、自分の気持ちを何一つ言い返せなかったけど。


『俺の彼女だ、誰に何言われても勝手に守る』


佐倉が言ってくれた言葉にすごく救われた。



「佐倉、ありがとう」



たこ焼きが入っているらしい袋を持ったまま、俯く佐倉の顔は見えない。

女性恐怖症の佐倉に、また無理させちゃったかな。
ダメな彼女で嫌になる。


「……たこ焼き、買えた?」


返事のない佐倉にほんの少し不安になって、数歩佐倉に近づけば、そんな私の手を佐倉が強く握った。


「……ムカつく」

「え?……あ、ごめん」

「意味わかってねぇくせに、謝んな」

「っ、」


咄嗟に出た謝罪の言葉。苛立つ佐倉には、そんな言葉すら不快だったらしい。



「ちゃんと言い返せよ!あんな言いたい放題言われて、なんで……なんでアイツのためにそこまでするんだよ」

「佐倉……?」


悔しそうに歪められた佐倉の整った顔。

目の下の泣きぼくろは、どこか、本当に泣いてるみたいに見える。
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