もう、我慢すんのやめた

少し顔を上げて、私の目を見た佐倉にトクンと心臓が跳ねて、佐倉の纏ってるピリピリしたオーラにヒヤッとする。


佐倉がこんなに怒ってるとこ、初めて見た。


「芽唯のこと、困らせたくねぇって思ってた。芽唯がアイツを忘れるまで待つつもりだった……でも」




───ガサッと音を立てて、佐倉が持っていたはずのたこ焼きが袋ごと地面に落ちる。それをまるでスローモーションのように目で追っていた私は



「っ、!?」



突然、流れるように私の背中に回った佐倉の腕に、気づいた時にはギュッと強く抱きしめられていた。



あまりに一瞬の出来事で、


状況を把握しようにも上手く頭が働かない。




「……もう、我慢すんのやめた」

「さ、くら……?」


真っ直ぐ、恥ずかしいくらいに見つめられて息が詰まりそう。もう呼吸の仕方も分からなくて、だけどギュッと抱きしめられた腕の中から逃げ出すことなんてもっと出来なくて。



「気づけばずっと、芽唯のことばっか考えてる」

「……っ、」




私は、ただ佐倉の次の言葉を待つしかない。


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