もう、我慢すんのやめた
「軽い脳震盪みたいだし、骨折程度で済んだなら不幸中の幸いだわ。まぁ、高校最後の夏の大会は出られそうにないけど。弥一はきっと、芽唯が無事ならそれでいいって思ってる。それは私も同じだから」
「っ……」
だけど、そんな弘子おばちゃんの優しさが、今の私には思いのほか辛くて。
どうせなら、もっと責めて欲しい。
優しくされればされるほど、自分で自分を許せなくなる。
……弥一、あんなに練習頑張ってたのに。
3年生、最後の夏の大会に出れないなんて、きっと絶対後悔することになる。
野球部のエースなのに、弥一なしで試合することになる部員のみんなにも申し訳なくて頭が上がらない。
今日私が、弥一を呼び出さなかったら。
場所が公園じゃなかったら。
時間が1時間ズレてたら。
そんな今更なことばかり考えては、眠ったままの弥一を見て苦しくなる。
でも、その全部が違ってたらあの小さい命を守れなかった。そう思うと、また苦しい。
正解なんてないって分かってるけど、もしも、を並べては戻らない時間を悔やむしかない。
誰かが傷付いてしまうくらいなら、いっそ私が傷つけば良かったのにって。